火災保険で直せるものの具体例とは?補償額や適用できない条件も解説
火災保険は火災による損害のほか、水災、風災などさまざまな損害に対応できるため、住宅所有者の多くが加入しています。
しかし、火災保険で直せるものと直せないものの違いや、具体例まで把握している方は少ないのではないでしょうか?
また、実際に火災保険を適用する場合、どの程度の補償を受けられるのか目安を理解しておけば、万が一のときにも落ち着いて対処できるでしょう。
そこで本記事では火災保険で直せるものの具体例、適用できない条件、補償額などについて解説します。
知っておくべき火災保険の基礎知識
まずは火災保険の基礎知識を解説します。
初めて火災保険への加入する方はぜひ知っておくようにしてください。
火災保険はどんな保険?
火災保険とは損害保険の一種であり、火災や水災、風災などによって建物や家財が受けた損害を補償する保険です。
戸建てやアパート、マンションなどの住宅で生活していれば、火災を始めとした災害リスクは常に付きまといます。
火災保険に加入しておけば、被害を受けたときに保険金を受け取れ、経済的な負担を軽減できるため、災害に備える有効な手段になるでしょう。
少し古い統計になりますが、内閣府の「保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会報告のポイント」によると、2015年度時点で火災保険(建物のみ)の加入率は約82%となっています。
家財保険の加入率は反映されていませんが、多くの方が加入している現状がわかります。
出典:内閣府|「保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会報告のポイント」
火災保険で直せるものとは?
火災保険で直せるものの対象は、建物と家財です。
家財とは、建物に収容されている動産(動かすことのできる財産)を指しており、たとえば机や椅子、家電、衣服などが該当します。
このほか、住宅の敷地内にある物置、車庫の中にある家財も対象となることを覚えておきましょう。
ただし、建物と家財のすべてが補償されるわけではなく、直せるものと直せないものがあるほか、加入する火災保険のプランによって適用対象や補償額などが異なります。
また、建物と家財両方の補償に加入する方もいれば、どちらか一方に加入する方もいるでしょう。
盗難や水濡れ、車両の飛び込みなどによる損害も補償するプランや、破損や汚損まで補償するプランもあるので、リスクの度合いを考えながら、適切な条件は何か、考えることが大切です。
地震保険との違い
火災保険とともに多くの方が加入しているのが地震保険です。
火災保険の一部という位置づけなので、単独では加入できず火災保険とセットで加入しなければなりません。
地震保険は地震による火災を補償対象としており、地震活動が活発化している昨今、加入率は増加傾向にあります。
損害保険料算出機構のデータによると、地震保険の付帯率(火災保険に加入している人のうち、地震保険に加入している人の割合)は、2013年は58.1%でしたが、2022年は69.4%と10%以上増えており、今後も上昇することが予想されます。
なお、噴火、津波を原因とする火災、損壊、埋没、流失による損害も補償対象になるため、大地震が想定される地域のみでなく、噴火や津波によるリスクが高い地域においても、加入が望ましい保険といえるでしょう。
出典:損害保険料率算出機構/地震保険 都道府県別付帯率の推移
火災保険で直せるものの具体例
では、実際に火災保険を適用するとどんなものを直せるでしょうか。
以下に直せるものの具体例を紹介します。
【建物編】火災保険で直せるもの
建物部分では、建物の構造部、内部、付帯設備に対して適用できます。
それぞれの具体例は以下の通りです。
・構造部:外壁、屋根、柱、梁、床、小屋組など
・内部:床材(フローリングや畳)、壁材・天井材(クロスや漆喰)、ドア、窓など
・付帯設備:カーポート、キッチン、トイレなど
建物部分は修理費も高額になりがちです。
特に外壁や屋根は場合によっては数十万円から数百万円程度の修理費がかかり、住宅全体の修理費の中でも大きな割合を占めるため、補償によるメリットは高いといえます。
【家財編】火災保険で直せるもの
家財部分では、家具、家電製品などに適用できます。
それぞれの具体例は以下の通りです。
・家具:ソファ、ベッド、テーブル、椅子、タンスなど
・家電製品:テレビ、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、電子レンジ、エアコンなど
このほか、キッチン用品、衣類、寝具なども被害が出れば、修理や交換費用が補償されます。
火災保険で直せないものとは?
建物や家財の多くで適用できる火災保険ですが、適用できないものも存在します。
たとえば車、バイク、現金、有価証券、動植物、データ、ソフトウェアなどです。
ただし、現金や有価証券などは焼失した場合、補償されませんが、盗難によって失った場合は一部火災保険による補償を受けられることもあります。
また、特約などを適用することによって、通常のプランでは直せないものも直せるケースがあります。
車やバイクを所有している場合は、自動車保険に必ず加入するようにしましょう。
火災保険が適用できないケース
火災保険で「直せるもの」に該当していても、適用できない場合があります。
保険はあくまで一定の条件で適用できるものだからです。
以下に火災保険を適用できないケースを5つ紹介します。
経年劣化による損害の場合
経年劣化による損害は、火災保険の適用対象外です。
たとえば壁や床の変色、サビの発生、外壁の色褪せ、ひび割れ、塗装の剥がれなどは経年劣化と判断されることが多いでしょう。
もちろん、火災などによって上記の損害が発生した場合は補償されますが、損害発生から時間が経つと、何が原因だったのか、わからなくなる可能性もあります。
そのため、火災などが発生した後は、損害を受けた場所がないか速やかにチェックするとともに、不明な点があれば保険会社へ問い合わせることをおすすめします。
故意・過失による損害の場合
故意・過失によって損害が発生した場合も、火災保険の適用対象外です。
たとえば家に火をつけ故意に火災を発生させた場合、火の取り扱いを誤って火災を発生させた場合、水道管の修繕を怠り水漏れが発生した場合などが考えられます。
ただし、失火責任特約や重大過失特約に加入している場合は、故意過失の場合でも補償される可能性があります。
また、近隣の建物からの貰い火によって火災が発生した場合、原則として出火元の建物の所有者が加入している火災保険は適用できません。
自分自身の火災保険によって修理する必要があることを覚えておきましょう。
損害発生から3年以上経過した場合
火災保険の請求は、基本的に損害を受けた日から3年間が期限となっています。
保険法第95条で消滅時効を3年と明記しているためであり、この期限は火災保険に限らず保険全般に適用されます。
したがって、3年を超過した損害は補償の対象外となりますが、災害発生後、すぐに被害を確認していれば、十分間に合う期間といえるでしょう。
ただし、保険会社によっては3年よりも長い請求期限を設定している場合もあるので、契約書類などを見て確認することが大切です。
また、東日本大震災のような大規模災害が発生した際は、保険会社が特例を設け、3年を超えても保険金請求を受け付けることがあります。
免責金額以下の場合
火災保険の契約によっては免責金額が付いているときがあります。
免責金額とは保険金支払い時に契約者が自己負担する金額のことです。
損害額から免責金額を差し引いた額が、実際に受け取れる保険金となるため、損害額が免責金額以下だった場合、保険金を受け取れないこともあります。
免責金額は契約内容によって、0円~5万円程度の設定があり、金額が大きいほど支払う保険料は少なくなります。
ただし、免責金額を高く設定すれば損害発生時の自己負担額も大きくなるので、いくつかのプランを比較して、適切な範囲を検討するようにしましょう。
地震や噴火またはそれに伴う津波による損害の場合
地震や噴火による損害の補償を受けるには、地震保険に加入する必要があります。
火災保険単独では補償対象にならないので注意しましょう。
地震保険は地震、噴火、津波を原因とする火災、損壊、埋没、流失による損害を補償する保険です。
ただし、冒頭でも解説したように、単体では加入できず、火災保険とセットで加入する保険商品になります。
また、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30~50%で設定することになっているので、最大でも50%までしか補償を受けられません。
50%以上の補償を受けたい場合は別途特約に加入する必要があるので注意しましょう。
火災保険の補償額はどのくらい?
火災保険の補償範囲や補償額を解説します。
住宅が損害を受けたときのことをイメージしながら考えてみましょう。
火災保険で補償されるのは損害額のみ
火災保険で補償を受けられるのは、基本的に損害額のみです。
損害額を計算するときは、対象となる建物や家財などの時価か再調達価額のどちらかを基準とします。
再調達価額と時価の違いは以下の通りです。
・再調達価額:保険の対象と同等のものを新たに建築または購入するのに必要な金額のこと
・時価:再調達価額から使用による消耗分などを控除した金額のこと
契約時に設定した金額に対して、上記で求めた損害額が下回っていれば、設定金額すべてが受け取れるわけではありません。
近年では時価を用いるケースは少なく、十分な補償を受けやすい再調達価格を用いるのが一般的になっています。
災害によって家が全焼した場合
火災などにより建物が全焼した場合、契約している保険金額の全額が補償されます。
この場合の補償額は、建物の時価または再調達価額を基準にし、家財の場合も同様です。
たとえば再調達価格を適用する場合で、建物の再調達価額が5000万円だった場合、全焼と認定されれば、5000万円の保険金が支払われます。
ただし、契約した保険金額が上限なので、保険金額を超過する補償は原則として受けられない点に注意しましょう。
災害によって家が半焼または部分焼した場合
半焼または部分焼の場合、損害額に応じて補償額を決定します。
たとえば損害額が1000万円ならば1000万円、損害額が800万円ならば800万円というように損害額の分の保険金が支払われ、半焼、部分焼などの明確な区分けはありません。
また、焼失した家の面積によって決まるのではなく、損害額が基準になることを覚えておきましょう。
一方、地震保険の場合は、損害の程度(全壊、半壊など)により、決まった割合の額が支払われるので違いに注意するようにしてください。
火災保険の種類と特徴
火災保険にもさまざまな種類があります。
特に住宅用とその他で適用される火災保険の違いは、よく把握するようにしましょう。
以下にそれぞれの特徴を解説します。
住宅用の火災保険
住宅用の火災保険には、住宅火災保険、住宅総合保険、団地保険の3種類があります。
保険の種類 | 内容 |
---|---|
住宅火災保険 | ・住宅のみに使われている建物と収容されている家財に付ける保険
・火災、落雷、爆発・破裂、風災・ひょう災・雪災による損害が補償範囲。 ・消火活動に要した費用なども保険金として支払われる。 |
住宅総合保険 | ・住宅のみに使われている建物と収容されている家財に付ける保険
・住宅火災保険の補償範囲に加え、水害、給排水設備の水漏れ、盗難、物体落下・飛来・衝突、持出家財の損害なども補償範囲。 |
団地保険 | ・鉄筋コンクリート造の団地・マンションを対象とした保険。
・住宅総合保険とほぼ同様の損害と費用のほか、修理費用、交通損害、団地構内での傷害、賠償責任の負担による損害も補償範囲。 |
住宅火災保険はもっとも一般的な火災保険、住宅総合保険はより補償範囲を広げた火災保険です。
特に近年増加している台風・ゲリラ豪雨などによる水害が対象になっている点が大きいので、今後、住宅を購入する予定の方は土地の地形や地盤なども考慮したうえで、それぞれの保険の特徴を理解し、適切なものを選ぶことが重要です。
店舗や事務所用の火災保険
店舗や事務所用の火災保険には、普通火災保険、店舗総合保険の2種類があります。
保険の種類 | 内容 |
---|---|
普通火災保険 | ・店舗・事務所などの建物と収容されている動産に付ける火災保険。 |
店舗総合保険 | ・店舗や店舗併用住宅、事務所などの建物およびそれに収容されている動産に付ける保険。
・補償内容は住宅総合保険とほぼ同様。 |
一般的に店舗や事務所用の火災保険は、住宅用の火災保険より保険料が高めに設定されています。
また、業種ごとに割増率が異なる点にも注意が必要です。
まとめ
多くの方が加入している火災保険ですが、保険の種類や実際に直せるもの、補償額の目安などはよく理解していない方も多いでしょう。
実際に損害を受けたときに備え、ご自身が加入している火災保険の補償内容を正確に把握することが大切です。
また、ライフスタイルや生活環境の変化などにより、適切な保険プランも変わってきますので、定期的に保険内容を見直すことをおすすめします。